みなさん、こんにちは!
本日は日本未公開の映画「オッペンハイマー」(Oppenheimer)の解説をしていこうと思います。こちらはクリストファーノーランの最新作の大作でもあり、また原子爆弾の父と呼ばれているオッペンハイマーについての映画で、現在日本未公開となっている映画です。
公開についてなどは様々な議論はあるものの、純粋な映画としての解説と考察をして行きたいと思います。全編ストーリーの流れは下記にネタバレ注意付きで書いてあります。映画の実際の進む順番通りに、ポイントやクライマックスも含めて、解説しますので、今後映画を見る人は注意してください。
予告編です。
簡単なあらすじ
世界初の原子爆弾を開発した原子爆弾の父と呼ばれる人「ロバート・オッペンハイマー」についての伝記映画です。1926年オッペンハイマーの学生時代からはじまり、第二次世界大戦真っ只中の原爆を開発するためのプロジェクト「マンハッタン計画」を主導する所を描いています。もちろん原爆をいかにして作ったかという所がストーリーのメインポイントですが、その後の彼の生涯についても語られています。
ネタバレ無しの感想・映像と音楽と演技
ストーリー自体は伝記映画で、実際の書籍オッペンハイマー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇』と言う本を原作にしているので、お話し的にはオッペンハイマーの人生を追っていく感じで進んで行きます。ストーリーと言うよりは今回特に映画として良かったと思う所は、クリストファーノーランっぽい映像美もさることながら、音楽には圧倒されました。またそれぞれの役者たちの演技は1流が勢揃いしているだけあり、素晴らしい物がありました。
あとはCGもほとんど少なくノーラン独特のフィルム映像が伝わってきます。ノーラン自身はImax 70mm見てほしいっぽく、ノーラン曰く70mmは3Dメガネ無しでも3Dが体験出来る。と言う事で、とにかくいつも通りノーランっぽい映像のクオリティは圧倒的です。史上初めてImaxフィルムカメラでモノクロの映像を撮ると言う事もしています。
役者の演技については豪華俳優陣の演技力は圧巻で、オッペンハイマーの主演キリアン・マーフィーはもちろんの事、安定のマットデイモンや、良いなと思ったのはロバート・ダウニーJrの演技、オッペンハイマーと対立する形として良い演技でした。あとは地味に少しづつ登場する歴史的な科学者たちがめっちゃ良いです。アインシュタインの登場はめちゃくちゃそれっぽいし、ハイゼンベルクなど当時の科学者たちの様子が伺えるシーンが多く面白かったです。
そして今回はノーラン史上最も音響を感じた作品でした。映像や役者たちとの感情や実験などの様々な様子がサウンドに乗せられており、非常に感情にのめり込んでくるような出来上がりとなっていました。サウンド自体が色を持っているような演出で作品と見事にマッチしていたのが凄かったです。ただちょっとうるさい所も個人的にはあったかと思いました。是非良い音響装置のある映画館で観たいと思う作品でした。
映画自体は3時間9秒もあり、これは必要ないだろう、と思うシーンも少しあったと思いますし、それぞれ思う所はあるにせよ、映画としては十分に楽しめる映画だったかと思います。
ストーリーの流れの解説(ネタバレ注意)
ここから映画の流れ通りストーリを解説していきますので、これから見る予定のある人は注意して下さい!
映画の幕開けは、第二次世界大戦後の1954年。オッペンハイマーが核兵器技術などの機密漏洩、スパイ容疑などをかけられている公聴会のシーンから始まります。当時は赤狩りが行われており、彼は共産党系の集会に参加したことや、共産主義者とのつながりなどについて追求を受けていました。
時は遡り、オッペンハイマーの学生時代へ。1920年前半、オッペンハイマーはハーバード大学を卒業後、イギリスのケンブリッジで物理学を学んでいました。イギリスでのニールス・ボーア(ケネス・ブラナー)との出会い、その後、留学先のドイツのゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンでドイツ人物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクなどと出会いがあったことが描かれています。この頃の若い彼の思想・精神的な危うさを描く場面として、ケンブリッジ在学中のオッペンハイマーが内向的で人間関係に馴染めず、教師を毒殺しようと試みるという描写もあります。
オッペンハイマーはドイツで博士号を取得したのち、アメリカに帰国し、カリフォルニア大学で教鞭を取ることになります。この時代のオッペンハイマーの描写として、左翼的、女好き、感情に正直に行動するというシーンが多くあります。共産党員である弟とその彼女と共に共産党の会合に参加したり、キティ(エミリー・ブラント)との結婚後も共産党員であるジーン(フローレンス・ピュー)との交際を続けていたりと後に公聴会で不利になるような出来事が描かれています。
そんな中、1942年、ナチスドイツの核開発に焦ったアメリカ政府は、対抗するためにマンハッタン計画を立ち上げ、レズリー・リチャード・グローブス准将(マット・デイモン)はその原爆開発チームのトップにオッペンハイマーを抜擢します。
全権を託されたオッペンハイマーは、ニューメキシコのロスアラモスを研究拠点にし、全米各地、またヨーロッパから亡命してきた優秀なユダヤ系研究者たちを集めて計画を進めていきます。1945年5月には、ナチス・ドイツが降伏し、当初の目標がなくなりましたが、未だ降伏していない日本に目標を切り替えて計画は続行されることになります。そして、ついに1945年7月に行われたトリニティ実験で人類初の核実験が成功します。映像、音楽共にこのトリニティ実験で示された原爆の恐ろしさ、スケールの大きさが画面いっぱいに表現されています。
実験成功を喜ぶ政治家、軍関係者、科学者たちに安堵を覚えたオッペンハイマーでしたが、同時に実験で目の当たりにした世界を滅ぼしかねない原爆の凄まじい威力に不安を覚えていきます。
そうして完成された原爆は、オッペンハイマーの手を離れ、政治家たちの決定により広島と長崎に投下されます。
あくまでも日本投下の描写はなく、閣僚会議で日本のどこに原爆投下するか場所を決める会話、最初の一発は威力を示すため、次の一発は降伏しないとこのまま続けるという意志を示すためのものだという会話劇に限定され、具体的な日本への原爆投下の映像描写はありません。あくまでも、アメリカ政府の立ち位置としては、戦争を終わらせるため、ヨーロッパで影響力を増すソ連への牽制として原爆投下があった流れが描かれます。
そのため、映像・音楽・臨場感ともに、トリニティ実験がこの映画のハイライトになっています。あくまでもオッペンハイマーの伝記映画なので、日本への原爆投下は、彼の権限を超えた出来事であったとの表現だとも伺えます。
そうして戦後のオッペンハイマーは原爆の父と評され、アメリカ兵を救った英雄として賞賛されますが、実際に日本へ原爆投下が行われ、多くの犠牲者が出たことに苦悩することになります。講演会中のオッペンハイマーが、トリニティ実験のフラッシュバック映像や被害にあった人のような映像に想いを巡らせる表現が出てきます。
その後、オッペンハイマーは1949年にソ連が原爆開発に成功したとのニュースを聞き、いよいよ危惧していた水素爆発の登場が現実感を増していくことに危機感を覚え、トルーマン大統領に直接会談を申し込みます。そこで、核兵器の国際的管理を呼びかけるものの、取り合ってもらえず、その後も水素爆発の登場を危惧し水爆開発に反対するようになった彼は赤狩りのターゲットとなり、公聴会にかけられていたという流れです。
映画の後半は、1954年に行われたオッペンハイマーへの密室聴聞会と、1958年に上院で行われた公聴会のシーンになります。公聴会では原子力委員会の議長を務めたルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)が主軸で描かれ、彼がオッペンハイマーへの不利な発言を続けていく様子が描かれます。
そして、ラストシーンはかの有名なアインシュタインとオッペンハイマーの過去の会話で幕を閉じます。オッペンハイマー自身が核開発の連鎖反応を引き起こし世界を滅ぼす道筋を作ってしまったのではないかと、アインシュタインに告白するシーンで幕を閉じます。
ネタバレ有の感想
映像や音楽や演技については上に書いた通りの感想でしたが、日本ではノーラン映画と言う事でファンも非常に多いかと思いますが、題材故にいまだに日本未公開と言う事になっています。同日に公開された真逆のロマンティック・コメディ映画「バービー」との影響で、2本立てで見に行くと言う現象からバーベンハイマーと言うワードまで登場し公式がキノコ雲を茶化した投稿をして、謝罪するような事にもなりました。内容はもちろん原爆を作ったオッペンハイマーの伝記映画ですが、政治的な立場の内容では無く、オッペンハイマーの人生をひたすら描いている作品でした。
ただ立場的にはオッペンハイマーを主体に描いているので、政治家や軍関係者にはやや否定的な描き方だったと思います。見ていて思ったのはジブリ映画で宮崎駿監督の「風立ちぬ」にかなり近いものを感じる映画でした。実際にオッペンハイマー自身は原爆を作った事に関しては後悔の思いもあれば、様々な苦悩が映画からは感じられます。映画の名前の通りオッペンハイマーについての映画でしたが、もちろん批評の大きさはあるにせよ、オッペンハイマーについての映画と言う観点からは、映画としてはある程度は史実通りで描き方も、中性的からあまりぶれない内容は僕は良かったかと思います。
オッペンハイマーの映画の感想は以上になります!
いかがでしたでしょうか。今日は注目作でありながら日本でも未公開と言う事で映画をしっかりとレビューさせて頂きました。
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